2013年3月24日日曜日

櫻の幻影と夢岩魚

今シーズンから、web magazine UNDER WATER GRAFFITIでライターを務めさせていただくことになりました。


先日の釣行の記事になります。

”櫻の幻影と夢岩魚”


このブログと合わせて、よろしくお願い致します。


3月を迎え、中国地方も一部河川が解禁を迎えた。
今シーズンのスタートはいつもとは違う。
渓流ではなく南限のサクラマスを追いかけることにしたのだ。
ただでさえ釣れないサクラマス。南限ともなれば釣れる可能性は万に一つであろうことは覚悟の上。
やはり、毎週キャストを早朝から夕方まで繰り返すもサクラからの反応はない。
分かっていても、一日中何もないと辛いものだ。

この日も夜中に起床し、眠い目をこすりつつ小雨の降る中、一路島根県へ。
いつものように最初の瀬で夜明けよりキャストを繰り返す。

やはり、いつも通り何も起きない。
一通りポイントを打ち終え、最後に雰囲気の良い瀬に入る。

毎回、この瀬に入ると”何かが起きるのではないか”という思いに駆られ、下がりきったモチベーションを上げてくれる。
ただ、キャストの疲れと期待感からか、だんだんとルアーの周りの流れのヨレがチェイスする魚のように見えてきた。
そろそろ上がるか…
そう思ったが時間は昼前。


”そろそろ、魚の姿が見たい”
その思いから渓魚との出逢いを求め、川沿いに帰路を取り、数日前の雨で増水気味の本流を見て回る。
何ヶ所か入ってみたが、たまにチェイスがあるくらいで今イチ反応が良くない。
”何もなければここで最後にしよう”
そう思って入った流れ込みで奇跡の出逢いが生まれた!

とりあえず、表層を下の淵までひと流しするもまだ水位が高すぎるのか反応がない。
今度はヒラを打たせやすいように作った、自作の5cmシンキングにチェンジ。
奥の流れにキャストすると、大きいリップが流れを掴みすぐに狙った少し深めの層へルアーを導いてくれる。
そこからラインスラッグを使い、流れにのせてヒラを打たせていると、ついにルアーの小さな瞬きが大きな煌めきへと変化した!
流れの中でグネグネと動き、輝きを放つその魚のサイズと魚種に疑いを持ちつつ、慎重にランディングネットに導くと、疑いは確信に変わった!

ゴギだ!しかも尺を超えている!

この川にゴギではない普通の岩魚はいないはず。だがしかし標高の高い所にしかいないゴギが、本流のしかも中流域に出てくるという話も聞いたことがなく、水中で岩魚属特有の動きを見せていたこの魚をランディングするまで、本当にゴギだと私は確信を持つことができなかった。
しかし、頭まで続くゴギ特有の虫食い模様が、中流域で出たこの魚への疑いをかき消した。

しばらくライブバッグで休ませ、改めて撮影を開始する。その頃には朝から降っていた小雨も止み、空も少し明るさを取り戻していた。

生息数も少なく尺を超える魚に出逢うことはかなり難しいと聞いていただけに、ファインダー越しに見える美しい魚体と叶わないと思っていたサイズに、カメラを持つ手は震えが止まらない。

鼻も曲がり、顔は厳つさを増している。

薄いグリーンバックが虫食い模様を引き立て、何とも言えない艶かしさを醸し出している。
見ていて飽きることのない美しさだ。

撮影を終え、流れの緩い所で馴染ませながら、また逢えることを願いネットから流れの中へと送り出す。
無事にリリースを終え、元の流れにゆっくりと戻って行く姿を見送っていると、達成感は最高潮を迎えた。
花や新緑の何とも言えない春の香りに包まれた誰もいない河原で ”やっと逢えた” この思いに震える拳を握りしめる!
時間はまだ14時前。
少し早いが、幸先良く奇跡の出逢いが訪れた今シーズンに期待し、この日はロッドを畳むことにした。

追いかけていた夢を叶えてくれた川辺には、櫻の蕾がほころび始めていた。
少し早い季節の移ろいを感じつつ、新たな出逢いへの期待に夢を膨らませるのであった。




  • Tackle Data
  • Rod » M-AIRE TB-68M naturalist
  • Reel » 旧CERTATE FINESSE CUSTOM 2506
  • Line » AR-C 1.0
  • Leader » ナイロン6lb
  • Lure » handmade 5cm

    解禁

    三月を迎え、中国地方の三月解禁の河川も解禁を待ちわびていた釣り人で賑わいを見せている。

    私は毎年この時期、いつも考える。

    ”解禁”とは何か?

    何の為の”禁漁期間”だったのか?

    禁漁期間があるのになぜ、”大量の放流”が必要となってしまっているのか?

    放流魚達の種親はどこの河川のものなのか?

    なぜ、アマゴの河川にヤマメを放流しているのか?逆もまた然り。

    なぜ、住み分けが起きているはずのイワナの生息域にヤマメ・アマゴが混生しているのか?

    これらの答えは、容易かつ単純に導き出せるように思える。

    だが、それを問題として捉え、解決するとなると、簡単なものではないことは容易に想像がつく。

    こんなことを書き綴っているが、私は学者でも何でもない。

    そしてまた、放流事業の恩恵を受けている釣り人の一人であることは確かな事実である。

    しかし、この考えだけは間違いではないと信じている。

    ”川は釣り堀ではない”